林業をはじめたい人に知って欲しいこと

林業をはじめたい人へ

林業はSDGs、脱炭素のテーマ業種です。

若者
若者

林業を起業したい!

業界関係者にも確かにそんな機運が高まってます。

林業を含む農業などの一次産業は、危機や有事になると注目されます。

脱サラして農業をはじめる人がいますよね。

でも、いきなり林業会社をスタートアップ起業するのはやめた方が良いと思います…。

現実はどんな状況なのか?

将来性はあるのか?

少しでもお伝えできれば幸いです。

国内の林業に将来があるのか?

若者
若者

これからは林業の時代なのでは⁈

時々、若い方から林業の将来性についての質問をいただきます。

私の回答は「林業はなくなりません…」とお答えするにとどまります。

林業では木材が生産されます。

林産物である木材を売って稼がなければならないのです。

そのためにはまず、輸入材との価格競争があります。

製造原価に注目しなければなりません。

まだまだ日本人の人件費が高い

一次産業の時給換算だと日本に比べて新興国はまだ安い
この戦いに勝ち目ある?

新興国の成長によって相対的に日本人は貧しくなってきたと言われます。

日本は成長が停滞しているといわれてますがデータで世界を見渡すと、日本人の人件費はまだ高いです。

かなり差が詰まってきましたが、林業従事者が時給300円くらいで集まる国もあります。

そんな時給だからといって手作業の肉体労働で伐採をしているわけではありません。

最新の高性能重機を使っています。

為替によって変動しますが、時給換算だと新興国5人に対して日本人1人で戦うことになります。

険しい地形が多い日本の植林地

日本の山林は急傾斜が多い

搬出コストがかかるのは、人件費が高いからだけではありません。

海外の大規模植林地は傾斜が15度と、かなりなだらかです。

日本の山林は30度を超える傾斜地が多くあります。

きつい傾斜地、坂道は木材搬出にコストがかかります。

急傾斜地での集材では安全の為に特殊な機械や装置が必要です。

それを揃えるには多額の設備投資がかかります。

原油が高騰すれば国内林業?

たくさんの重機を使うので林業は原油に依存

資源価格が高騰しているので国内の山林資源を活用すれば…?

よく耳にしますよね…。

伐採では重機を使い、搬出にはトラックを使います。

燃料が無ければ国内林業はほぼ動けません。

「国内林業で原油価格高騰のリスクヘッジをしている…」というのは幻想に近いのです。

重大事故になりやすい林業

林業でおきた事故は死亡事故につながりやすいです。

林業を営む現場は山深い山間部です。

高度な医療を準備して受け入れ体制が整った病院は近くにはありません。

そのため大ケガや急病の場合には、すぐに高度医療を受けることができない環境です。

大病院がある市街地では処置を早く受けられますが、搬送に時間がかかる林業事故では命を落とす可能性があります。

過酷な自然環境に向き合わなければならない

豪雪地は雪かきが毎日

降雪地では、自宅、会社、現場と毎日除雪しなければなりません。

豪雪地ですと手作業だけでは無理で、除雪に重機を使わなければなりません。

暑い日が続いたり豪雨が来たりして作業が計画どおりに進まなかったりします。

夏場は虫が多くて仕事にならない日があったりします。

蜂に刺されると林業の災害事故です。

北海道では林業現場でヒグマが目撃されることも増えてきました。

林業の現場は未開の大自然です。

林業の働く環境、待遇

林業の会社は100人以上の企業が珍しく、ほとんどが中小零細企業です。

人気がない理由の一つに賃金が低いことがあると思います。

しかし、林業では決して経営者が儲かっているとも言えません。

ブラック企業は少ないが

林業会社は、ほとんどが田舎にあります。

地方は高齢化が著しく人手不足なので、林業はブラック企業が少ないです。

どちらかというと移住者にやさしく接してくれる地方の方が多いかもしれません。

朝は早いですが作業を切り上げるのも早い勤務時間に慣れなくてはいけません。

季節雇用だったり有給休暇や福利厚生が充分でないことも人気がない理由に挙げられます。

遅れるデジタル化

山林内に電波が届かないことや、従事者に中高年が多いのでデジタル化が進んでいません。

ほとんどの林業会社は少人数です。

アットホームな経営の一方で、デジタル化が遅れて非効率だったり生産性が低いことがあります。

それが低賃金につながる一要因でもあります。

山林内に電波が届くようになるとオンラインになり、林業現場が可視化され変貌する可能性があります。

林業起業に必要なヒト・モノ・カネ

今から「林業を起業したい」というのは可能でしょうか?

起業には、ヒト・モノ・カネが必要です。

それらを見ると林業の現実ではなかなか厳しい状況です。

とにかく高額!林業の設備投資

林業の重機設備投資は高額
ハーベスタは1台3000万円以上も…

一番最初に林道を作らなければ、林業をスタートできません。

不適切な林道だと大雨や土砂崩れ、雪崩であっという間に損壊してしまいます。

補修すると結局、高コストになります。

それなりの設備投資で重機や道具を用意しなければ、林業をはじめることができません。

トラック、グラップル、ハーベスタなど重機だけで、中古で揃えても数千万円です。

1人+1人は2以上の生産

重機が高性能機械になりましたが、今の林業は依然として労働集約型です。

一人作業よりも二人の方が2倍以上、生産力が向上します。

個人起業は工夫しないと難しいでしょう。

事故発見や救護通報を考慮して、一人で山林内作業することは推奨されてません。

地方は働き手が少ない

地方は働き手が少なく人材が集まらない

都市部よりも高齢化が進む地方では働く人が少ないです。

職種を問わず人材募集してもなかなか働き手が集まりません。

人口減でその傾向は続いていきます。

林業のロボット化はまだかなり先です。

人材を集めるには投資しなければならず経営資金を圧迫します。

個人林業家+副業で…

その他にも山林や立木を買ったり、燃料代を支払うお金が必要です。

それでも林業をやりたい人は個人経営が良いかもしれません。

しかし、個人経営でも最初から林業だけで食べていくことが難しいでしょう。

ダブルワークや別の収入源を確保しないと生活できる年収を確保できないと思います。

怪我や病気になった時は出費がかさみます。

住宅やクルマ、税金、携帯料金、ライフライン、食費など、山に住んでいても様々な費用がかかります。

林業の存在意義を感じる人には

林業の求人では少しずつ賃金が上昇傾向ではあります。

それでも求職者から見ると、林業の将来性は必ずしも明るいとは言えません。

林業収益は為替や原油価格、安全対策や天候に左右されて、利益が上がりにくいのです。

木製品の最終消費は物流や住宅が主です。

これらは景気の変動を敏感に受けます。

環境重視の林業へ変わっていく

昭和の林業は量を求める木材生産でした。

令和の今は、脱炭素で環境を守る林業へと役割が変わってきている気がします。

国内山林には費用がかかりすぎて赤字になる人工林が存在します。

天然林に戻していく林業仕事も出てくるかもしれません。

災害防止や水資源の確保、養殖ともかかわりが深い林業が無くなることはありません。

しかし、その役割が変わるでしょう。

林業+農業

兼業農家で林業経営
農と林

今の時代に林業をはじめるなら、農業をからめてみてはどうでしょうか?

「林業+農業」という感じです。

働く季節や期間を調整するのです。

工夫すれば畜産酪農も考えられるかもしれません。

林業一本だと資本力が必要になり、無ければ大きな固定負債になります。

できる範囲の林業で得られる収益を計算し、足りない支出を農業や酪農で補うイメージです。

小さな経営ですが、エネルギーと食を考える時代に合っている気がしますね?

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