SDGsや脱炭素で注目される林業ですが…
日本は人口減だし、もう木材は使わないでしょ…
輸入材がどんどん増えているんじゃない…
林業なんて若者から見向きもされない…
↑コレらはすべて間違いです!
地味な国内林業も世界にリンクしています。
林産物の木材は全産業が複合的にからまるコモディティ取引です。
データをよく見ると国内林業の状況が見えてきます。
ココでは国内林業の将来展望ではなく、過去データからの事実だけを紹介します。
なお、データは林野庁公開の数値を引用させていただいてます。
世界の木材消費量を見てみよう
まず、近年の世界中の木材消費量はどうなっているのでしょうか?
- 2009年の産業用丸太の消費量は、15億5,563万m3、
- 2018年の産業用丸太の消費量は、20億3,272万m3、
なんと9年間で30%以上も木材消費が増えています。
いきなりですが無知な私は、
世界の素材は木材から鉄や樹脂、コンクリートに移行してるんじゃ…
と、錯覚してました。
燃料材を合わせると約2倍の39億m3余り
世界の丸太消費量はデカい数字ですが、さらに拡げて認識しておくべきことがあります。
先ほどの「産業用丸太」とは薪炭などの燃料材を除く丸太を指します。
製材、合板、チップは産業用丸太から製造されます。
実は産業用丸太量と同じぐらいの丸太が燃料用として世界で消費されています。
上記の産業用丸太約20億m3に加えて、さらに燃料用丸太約19億m3が消費されてます。
世界中で伐りだされた木材の半分が、薪や炭として燃やされてるのです。
世界の木材消費を考える時、薪炭用のボリュームもよく見るようにしてください。
日本の木材需要量は減っているのか?
少子化で人口減の影響があるかもしれない…?
日本国内において木材需要量は減っているのでしょうか?
- 2009年の国内木材需要量は6,480万㎥です。
- 2020年の国内木材需要量は7,440万㎥です。
※数値は燃料材を含みます。
11年間で14.8%あまり木材需要量が伸びたことになります。
近年の日本人は、昔よりも木材を使うようになってきたのです。
国民一人当たりの木材需要量が増加
ご存じのとおり日本は人口減少中です。
木材需要量が増加するってことは、国民一人当たりの木材需要量が増えていることになります。
何となく、昔の方が木材を使っていたような…
林業に携わる私でさえ、コレには実感がありませんでした…。
木材需要指標は、景気による住宅産業の影響や段ボール需要が目立ちますよね。
脱紙、脱プラ、木質バイオマス、薪おが粉等たくさんの需要がかかわっています。
事実として国内では木材需要が増加しているのです。
輸入材量が減っている
ホームセンターに行くと相変わらず北欧、北米からのツーバイフォー材が目立ちます。
流通する製材品は外国材が今も主流のような感じがしますが…。
- 1998年の木材輸入量は、9,045万m3です。
- 2017年の木材輸入量は、5,219万m3です。
※製材、合板、パルプ等+燃料材を含む総数。
19年間で約58%も木材輸入量が減っているのです。
円安が進み「木材は輸入すればいいんだ…」とは言ってられないですね。
製材品の輸入も減り続けてる
小売り代表格のホームセンターで目にするのは製材品や合板などですよね。
輸入製材品は変わらずに取引量が多いチップ、パルプ、燃料材が減ったんでしょ?
という方がいます。
でも、それは違って、製材品や合板も年々、微減の輸入量が続いているのです。
- 2007年の製材輸入量は、1,165万m3です。
- 2017年の製材輸入量は、998万m3です。
製材については約14%減少しています。
- 2007年の合板輸入量は、603万m3です。
- 2017年の合板輸入量は、566万m3です。
合板は約6%減少しています。
木材自給率50%超えなんて無理?
日本政府が2009年に発表した「新成長戦略(基本方針)」によると、
木材自給率50%以上を目指す。
とされてました。
さて、10年後の2019年にはどうなったでしょうか?
農林水産省の林業白書によると、国内消費する木材のうち国産材が占める割合を示す「木材自給率」は2020年に41.8%とされてます。
2002年は20%未満でした。
目標の50%を達成できなかったものの、木材自給率がかなり上昇したことは確かです。
林業従事者数と新規就業者
少子化高齢化で林業は消滅しそう…
林業従事者数は2010年に5万1,000人とされてましたが、5年後には4万5,000人に減ってます。
直近10年間で10%以上減っており、今は全国で4万人余りと推定されてます。
新規就業者は減らず、少し若返る
では、新しく林業に参入する新規就業者数は減っているのでしょうか?
新規就業者は2020年に2,900人あまりです。
最近10年ほど3,000人前後で変化がありません。
林業就職を目指す人が毎年3,000人いて、それがこの10年間ずっと続いているのです。
さらに従事者をみると、35歳未満の若年者率が2000年の10%から2015年の17%に上昇してます。
全産業と同じく65歳以上の高齢者率は増加しています。
ということは、林業で働く人は
- 毎年、3,000人が新しく林業に参加する
- 40歳代、50歳代が少ない
- 若者と高齢者で構成
これがデータで見る事実です。
まとめ
データが2~3年の短期スパンの比較だとコロナの影響などがあり、林業の大きな流れを捉えることができません。
正しく林業をとらえるために最近10年間を中心にして、データから起きてることをまとめました。
- 世界中で木材を使いはじめた
- 世界の木材用途の半分は燃料用
- 日本人一人当たりの木材使用量が増えてる
- 外国産輸入材が減ってきた
- 木材自給率が大幅改善してる
- 林業を目指す人は減っていない
- 作業チームは若者と高齢者で構成
林業なんて斜陽産業ですよ…
確かにそんな感じがしますよね…。
しかし、起きてる事実を過去の数字で捉えることが大事です。
私は輸入材が減ってきていることに気づいてませんでした…
木材需要量が伸びつつ自給率もアップさせたことになります。
低賃金で待遇が悪い林業は若者から見向きもされないよ…
これも認識が少し違っていまして、林業を目指す人は減っていません。
林業に就職する若者がわずかに増えているデータもありましたね。
人口減だし新規林業就職者が年々減ってると思っていました…
林業経営者や働くプロでも事実認識を誤っていたりします。
林業の未来がどう推移するかわかりません。
しかし、過去はデータで見ることができます。
時間がある時に林業関係者や若者に見ていただきたいものです。