エネルギーと林業、木質バイオマス発電

おじいさんはヤマに柴刈りに…

もともとの林業は燃料を得るための活動でした。

暖をとったり煮炊きするためです。

日本昔話で出てくるエネルギーは薪ですが、今は原油です。

林業で生産される丸太の用途はすべてが建材や家具材には使われていません。

何割かは燃料用として運ばれます。

薪ストーブをつかう家も増えてきましたが薪の使用量はわずかです。

現在の林業は環境保護の色が濃いと思います。

エネルギーと林業の関係について考えてみたいと思います。

木質バイオマス発電は効率良いのか?

木材を燃料として燃焼させエネルギーを得る発電を、木質バイオマス発電といいます。

発電された電力は再生可能エネルギーと見なされます。

木質バイオマス発電の効率はいくつかの要因に左右されるでしょう。

既存の発電所に比べて効率的なのでしょうか?

燃焼効率

原料の木材は燃焼させます。

燃焼効率が高いほど、発電エネルギーを有効に得られます。

高効率の発電設備や排ガスクリーン技術で、効率性と環境配慮型の発電所がほとんどです。

発電設備も大規模化され、単位エネルギーあたりのコストを低く抑えてます。

木質を燃料とした発電は古くから存在ました。

しかし、技術の進歩により木質バイオマスの発電効率は向上しています。

供給の効率は?

木質バイオマスの燃料となる木材や木くずは、本来なら捨てられる未利用木材が使われてます。

もともと使わない木材なので、これ以上お得なことは無いでしょう。

ただ、それを集めて運搬するコストが大きいです。(のちほど説明します)

木質バイオマス原料の生産、在庫、輸送などの過程も考慮しなければなりません。

生産流通の最適化が求められます。

風力、太陽光と比べたら

風力発電は風速によって発電量にが変わり、太陽光発電は日照によるので悪天候や夜間は発電量が落ちます。

天気に関係なく夜間でも計画的に発電できるのがバイオマス発電のメリットです。

発電方式の効率性は、使用される設備や地域、気象条件などによります。

様々な計算方法でエネルギーを取り出す効率性を求めると、ザックリですがバイオマス発電は約40%の効率性と言われてます。

風力、太陽光よりもエネルギー変換効率が良いとされてます。

懸念されていることも…

全国各地に続々と稼働を始めた木質バイオマス発電には懸念事項もあります。

タダで未利用材を仕入れても

未利用材がタダでも、集めて運ぶ費用がかかります。

発電所が10,000円で買うと言ったとします。

山に散らばった未利用材を集めるのは重労働です。

重機を投入するにしてもコストはかかります。

7,000円で集めて3,000円の輸送料金なら利益は出ません。

ガソリン等の燃料代も人件費も高騰中ですしね。

高騰する燃料木材価格

今、全国各地で木質バイオマス発電所が稼働しています。

慢性的に燃料となる木材の供給が不足しています。

国内林業は人手不足で供給力は限定的です。

当然ながら価格が上昇することになります。

これは市場原理に基づくもので、木材価格の需給バランスが崩れて価格が上昇しています。

高い単価を求めて混ぜる

資源エネルギー庁で定める1kWhあたり調達価格は、間伐材などの未利用材なら40円です。

安価な輸入のパーム椰子殻なども使えるのですが24円に下がります。

発電燃料によって16円も差があります。

40円で売電したいのは当然です。

ウワサですが安い輸入材を未利用材に混ぜている発電所もあるといいます。

無計画な森林伐採も

高く買うので、山の木を伐りませんか?

間伐材などの未利用材を使うことを推奨しているのに、持続不能な森林伐採がされていたりします。

無計画な森林伐採がすすめば土砂災害発生や生態系への悪影響が懸念されます。

斜面に設置されて生態系への影響が懸念されてる太陽光発電と同じ図式です。

燃やすので…

バイオマス発電も燃焼させるので二酸化炭素が発生します。

バイオマスは再生可能な資源なので再生可能エネルギーとみなされます。

もし、ルールが変更されたら火力発電と同じ扱いにされる可能性が有ります。

大気中にCO2を放出してるわけですから気候変動への影響が懸念されます。

適切な排ガス処理が行われないと環境に悪影響を与えます。

今は新しいですが、発電設備が老朽化するにつれて修繕やメンテナンスを適切にしないと、環境問題を引き起こす恐れがあります。

林業は変わったか

木質バイオマス発電所ができはじめてから確かに木材流通に変化がありました。

パルプ、チップ材、おが粉材が高騰しました。

それまでは「要らない…」「¥5,000なら…」という感じでした。

建材用のまっすぐで太い丸太は人気ですが、曲がったり細い丸太の売り先に困っていたのは確かです…。

それが木質バイオマス木材の需要により¥10,000でいつでも販売できる状況になったのです。

バイオマス木材専門では採算性が

しかし、採算性が良いかと言えば前述のとおりです。

少なくとも「バイオマス木材専門で起業」これは難しいでしょう。

発電所が増えたので需要が強いのは間違いありません。

しかし、あくまでも燃料として木材を使うので買値に限界があります。

「上昇してきたバイオマス木材価格がさらに上がっていく」というのは考えにくいでしょう。

国内の山林から素材丸太を伐り出し運ぶには一定のコストがかかります。

単価が高い住宅建材や家具材を扱わないと林業事業化は不可能です。

荒れた林地に変化も

輸送コストを抑えるために移動式チップ製造など工夫している事業体も増えてます。

間伐してなかった林地も、作業現場から近いので伐採するか…

というのもバイオマス木材として売れるようになったからでしょう。

以前よりも積極的に低質材や間伐材を出荷しようという動きは林地がキレイになります。

もし、放置していたら大雨によりいずれ流木となる可能性も高いです。

限りある林地を丁寧に扱うようになったり、輸送資源を節約する取り組みは木質バイオマス発電がもたらしたメリットです。

問題もあるがバイオマス木材需要は大切

国内森林資源の適切管理は以前からの課題でした。

公共事業だけでは予算に限界があります。

そこにエネルギーという新たな需要を作ることで林業を促進させようとする政策がはじまりました。

林業現場、木材業界の現実を見る限り、概ね成功してると言えるでしょう。

「盗伐してまで…」「輸入材と国産材を混ぜてない?」いろいろな良からぬウワサがあるのも事実です。

そのデメリットを加味しても、バイオマス木材需要前と比べれば低質材木材市況はかなりマシです。

頼みの綱だった紙原料となるパルプ材も、ご存じの「脱ペーパー」時代です。

低質材の販売先が無かったのは否定できません。

スギ花粉の問題で植え替えるにしても伐採が進まないとできません。

植えたのに伐採適期をとっくに過ぎてる林地もたくさんあります。

生産林地にするにも天然林に戻すにしても伐採して植林すれば、将来の世代に資源を残すことができます。

木質バイオマス発電によって木材とエネルギーが関連するようになったのは、問題が多いものの林業界にとって概ねメリットだったと思います。

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