なぜ、冬に木を伐採するんですか?大雪なのに…

なぜ、冬に木を伐採するんですか?大雪なのに…

木を伐採で最も忙しいシーズンは冬です。

あまり知られていませんね…。

しかも、北海道の冬で最も雪が降る12月から1月の厳冬期に最盛期を迎えます。

普通に考えると、春とか夏の方が気候が良くて木を伐採する作業に適していると思いませんか?

なぜ、真冬に…?

機械力が向上した現代だからではありません。

斧やのこぎりを使ってた昔からなのです。

雪が積もって寒さが厳しい冬に敢えて伐採をするのは、どうしてでしょうか?

なぜ、今も造材は冬期なのか?6つの理由

今も木材を伐採する造材は冬が繁忙期
この雪道も厚さ1mほどある

現代においても、木を伐りだす造材は真冬が繁忙期です。

上の写真は留萌の4月の雪解け時期です。

夏場のように降雨で林道が水浸しにならないですし、北海道の冬は凍結して道路が氷層として固まり車両が通行しやすくなります。

造材作業員は兼業農家が多くて夏場は農作業で忙しかったから…という理由もあります。

農作業が多忙な春、夏、秋は田畑から離れることができません。

雪国の造材は雪を利用する

豪雪地帯の素材生産は、古くから雪を利用します。

山奥へ行くには林道が必要です。

山林内の道路は国道等の生活道路とは違って、道路整備が行き届いていません。

大雨で林道が崩れていたり、中には現場まで林道がまったくないこともあります。

新しく林道を整備するには多額のお金がかかります。

なかなかコストをかけることができません。

雪が多く降る豪雪地帯の林業は、古くから雪を利用して山奥へと仮設雪道を設けます。

降雪地でなくても、凍結して仮設道路になる

凍結した仮設道路は大型トラックの通行が可能になります。

では、雪が少ない地域ではどうなのでしょうか?

少雪地域でも冬期に伐採をします。

湿地や泥炭地も氷点下になれば凍結します。

沼地が凍結して通行可能に…!

固い地盤の道路が完成し、車両の通行が可能になります。

夏には通行できない土地が、良質な仮設凍結林道になったりするのです。

雨でぬかるんだりせず、凍結してるので土埃が舞ったりしません。

やっぱり、冬期が最適なのです。

昔は林道を整備するのが大変…

機械力が乏しかった昔は、林道を整備するのは大変な労力

機械力が乏しかった昔は、林道を整備するのは大変な労力でした。

当時は木材を運び出すのに人力や家畜(馬力)を使っていました。

それでもやはり林道整備が必要です。

整備が不十分な林道では、滑落したりして事故を誘発します。

重機がない時代に土砂を整地して道路を作るのは大変な労力です。

そこで、

どうせ真冬に使うなら降り積もった雪を踏み固めて”仮設雪林道”を作ろう…

と、なったと思われます。

その方が労力が少なかったからなのでしょう。

冬は木を植えることができないから

春や夏の林業は、木を植えたり雑草の下刈りなど育林する造林があります。

雪が降らない時期に山林内でやらなきゃいけない作業がたくさんあります。

冬には「木を植える」植林などの造林作業ができません。

草が伸びる夏は、雑草を刈り払う下刈り作業があります。

今も伐採は冬がメインなのは、「春夏が造林で忙しいから…」ということもあるのではないでしょうか?

良材なのは冬伐採の丸太

乾燥による「くるい」が少ない冬期素材生産の丸太

動物のように樹木も、冬を迎える前に冬眠に入ります。

真冬は栄養が流れてくる降雨などが期待できません。

生物活動を低下させて休眠状態に入るため、樹幹を流れる水分(養分)を減らします。

樹木も冬眠しているのです。

伐り出した木材を使う時に、樹木内の水分が少ない状態の方が乾燥による「くるい」が少なくなります。

さらに樹幹内に養分が少ないので腐りにくく、建材として腐朽に強い良材となります。

水分が少なくて養分も少ないので、丸太として在庫しても長持ちします。

夏に伐採した丸太は早く腐朽がはじまり、消費期限が短いです。

こんな理由があり、古くから冬期伐採の木材が良材として取引されます。

落葉樹は作業効率が上がる

冬になると葉が落ちる落葉樹は、伐採が何かと楽になります。

見通しが良くなると安全性が高まり、積もった葉で足元が悪くなることもありません。

ハチ災害のリスクが減り、伐倒や枝払いの作業効率が上がります。

伐採において葉は邪魔で不要なものなのです。

真冬以外は集材という運搬がカギ

運搬するトラックが入れる地点まで木材を運んでくる必要があります。

伐採した丸太を出荷する時に、運搬するトラックが入れる地点まで木材を運んでくる必要があります。

伐採した木材を集めて集積所まで運ぶ作業を”集材”と呼びます。

集材計画に大切なのが、運ぶ距離と方法です。

道路条件が悪い季節や急傾斜な現場では、安全に集材する方法を考えて実行しなければなりません。

やみくもに長い距離の集材は、全体の作業時間を長くして生産性を悪化させます。

道路条件が悪化

冬の作業が一段落の春は、雪解け水の影響でなかなか山奥までは行けません。

3月、4月の北海道の河川や沢は、雪解け水で増水し低地は水たまりができます。

土質が悪いとぬかるんで林道は田んぼの中のような状況です。

ひどい現場だと真冬以外は通年湿地で、来冬まで立ち入れないこともあります。

物理的に冬しか伐採ができない現場もあります。

その理由は、伐採こそできても、道路条件悪化によって集材不可能で運べないからです。

丸太に土砂が付着すると…

砂や泥が丸太に付いてると鋸が痛むので製材できなくなる

夏に集材すると伐りだした木材に砂や土が付着します。

製材工場は鋸で丸太をカットします。

鋸刃が土や砂粒を噛むと、途端に切れなくなります。

土砂で汚れた丸太は製材工場から嫌われてるのです。

雪があるとそんな心配が無いので、製材工場からも冬伐採の丸太が好まれます。

雪国に合った重機を

運搬の林業機械を準備することが大切

林業専用の運搬重機は種類がたくさんあります。

その時の現場条件に合った重機を使用することが生産効率を高めてくれます。

フォワーダー、キャリアダンプ、ウインチなど様々な運搬系林業機械があります。

その中から現場に合った最適な運搬方法を計画しなければなりません。

特殊な重機で汎用性に劣ります。

レンタルやリースで使用できると助かります。

通年、集材で使用する重機ではないので設備投資しにくいものです。

今も続いている冬の造材

自然を相手に作業する造材会社は、雪解けの状況を気にしながら造材作業を計画
雪解け時は集材計画が大事

雪が降る地域では多くの人々にとって春が待ち遠しいものです。

自然を相手にする造材会社は、雪解け状況を気にしながら作業計画をしています。

雪国の市街地では、春になると一斉に道路工事や建設工事がはじまります。

それと同時に伐採事業者は、冬期作業を終えてヤマを下りてきます。

気温上昇で雪解けがすすむと、現場条件が悪化して冬期造材は終了します。

計画、修正が大事な冬伐採

冬なので悪天候で作業できないことがある。

天候の影響を受ける冬期造材作業は、計画どおりに進まないものです。

吹雪がひどくて現場にたどり着けない日もたびたびあります。

記録的な大雪で除雪だけで終わる日もあります。

寒さで体調を崩す作業員も出るかもしれません。

雪解け時の春に集材して丸太を出荷するのは、困難が多いことはご紹介のとおりです。

計画遅れによる雪解け時の造材、出荷は想定しておかなければなりません。

ヤマで感じる温暖化の影響

近年は、温暖化の影響で慢性的に気温が高く、ヤマでも春が早く感じられます。

2月に入ると雪解けを感じる事もあります。

ベテラン作業員は、今は気温上昇が早いと、昔との違いを口々にします。

ベテラン
ベテラン

いやー、最近は雪解けが早いわ…

3月になると気温上昇が激しく、急速に雪解けが進む年も多くなりました。

降雪量が極端に少ない年もあります。

少雪ですと道路に雪を利用した時に、ぬかるむ湿地が早く発生します。

気候の変化を織り込みつつ、計画に注意を払う必要があります。

精度が高くなった気象予報をリアルタイムでつかい、細かく計画変更していく事が求められていると思います。

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