素材生産業って、どんな業種?
コレが林業に関する業種とは知らないでしょう…。
一次産業の林業において、木を植えたり、育てたり、伐ったりと、様々な仕事があります。
林業は農業と同じく収穫物を販売して収益を得ます。
農作物と木材の違いです。
木材業界の人しか知らないと思われる「素材生産」を調べてみました。
素材生産とは何?
素材生産業を調べるにあたり、まずは言葉の意味から調査してみました。
「素材」をググってみると…
生産は何となく理解できますよね。
ちょっとわかりにくいのは素材の方です。
素材という言葉をネットで調べてみたら、4つの意味がでてきました。
- もとになる材料、原料。原材料、食材、繊維など。ウェブサイトの画像や音声、動画データも素材と呼ぶ。放送番組などに使う加工前の元映像や音声を指す。
- 絵画や彫刻における絵の具・石材などの芸術作品の物的材料、文学や音楽における言語・楽音などの芸術作品の題材となる自然や人事、モデル。
- 伐採し、適当に切断しただけの木材、原木。まだ製材されてない材木丸太の類。
- 人材などが持つ素質素養や可能性。「あの人は素材がいい」と言うように外見や才能のことを指す。
上記リストの3番目が木材業の意味に合致します。
素材の意味が木材を指すとはあまり知られてませんよね…。
原木丸太のことを素材という
ネットで調べると、素材が丸太を指すことをようやく理解できます。
でも、上位に検索される食材や画像データ、芸術作品の材料や題材の方が素材として一般的ですね。
丸太のことを素材と言う方は、業界関係者などに限られます。
製材と素材
製材は聞いたことがある方が多いでしょう。
製材工場というのも聞き慣れてると思います。
製材は角材や板材などの材木で、建材としてホームセンターでも売っていてよく目にします。
加工された製材は断面が角材、素材は丸太なので断面が楕円です。
素材ってよく使われる?
では、業界の現場で頻繁に使われているのでしょうか?
今月は素材が多く出荷できるよ…
今、工場の素材が足りなくて…
とは、あんまり言いませんね。
私の周りの業界関係者間では、日常会話でそれほど「素材」を使いません。(使う方もいます…)
「丸太」とか「原木」って言う方が多いです。
「材はあるの…?」と、素を省略する方も多いですね。
素材生産業は林業用語です
「素材生産」でググると、完全に林業用語になって検索されます。
素材の意味を個別に理解すれば、絵の具や画像を生産する行為も含まれますよね。
不思議です…
林業であることの証、素材生産業
国の森林機関といえば林野庁です。
林野庁によると、素材生産とは下記のとおりです。
国有林に生育する立木(樹木)を伐採して素材(丸太)に加工し、決められた場所に運搬・集積するもの。
山林に木材資源があっても、立木のままでは産業で価値が見出せません。
立木から丸太にして製材工場に納入する事業を素材生産業と言います。
地域によっては伐木造材、または切出しとも言われています。
林業関係者で「素材生産業」を知らない人はいません。
英語では…
素材生産をそのまま翻訳すれば、こうなります。
”Material production”
これだと林業に限定されていません。
日本語の素材生産の意味とはちょっと異なります。
ガラスや鋳物も素材(Material )なので、それを生産している工場や業態も含まれる意味合いになります。
より素材生産の意味に近いのは”forestry”なのかもしれません…。
立木と素材(りゅうぼくとそざい)
立木と素材の違いがおわかりいただけましたでしょうか?
林野庁では不動産の国有物件公売のように、立木公売、素材公売があります。
ご紹介の内容を見ていただければ、「素材公売で売られる品物が何か?」を理解いただけたと思います。
ちなみに立木とは
「たちき」ではなく「りゅうぼく」って読みます。
私は入社した時にコレを聞いて、ダムに浮いてる「流木(りゅうぼく)」だと思っていました。
「”たちき”って言いにくいからかな…」と思っていましたが、違うようです。
「たちき」と「りゅうぼく」は、読み方で少し意味合いが異なるようです。
「たちき」は一般の方も使われる意味でOKです。
「りゅうぼく」は法律用語で「土地に生育する樹木、また、その集団」のことを指します。
つまり、法律上の用語として使われるのが「りゅうぼく」なのです。
林業サービス業とは?
実は私も最近知りましたが、林業サービス業という業種名もあります。
従来から林業は、所有する山林を自ら手入れして収穫し販売して、生計を立てる業種と認識されてます。
それとは少し異なる林業種経営が増えてきました。
どんな仕事をする業者なのか?
林業サービス業を調べると、その意味は「依頼者から受託して造林育林、素材生産を行う事業、および立木購入して素材生産を行う事業」とされています。
要するに山林を一切所有してなくても、林業種全般の仕事を請け負う事業のことを指してます。
林業家のお手伝いっていう感じでしょうか。
機械化がすすむ林業では、高性能機械をつかって素材生産するのが当然となっています。
林業を経営する方が個別に高額な重機を所有するのは負担が大きいといえます。
林業全体の生産効率を考えれば、専門的に事業を請け負う林業サービス業者が安全に速く作業した方が良いでしょう。
得意と不得意がある
林業サービス業でも元々の事業により得意分野が異なります。
植林や育林を専門にする造林業者か、素材生産を中心にする造材業者かに分かれます。
これまでは造林専門や素材生産専門で業者もすみ分けしてきました。
これからの林業サービス業は、両方を通年で作業する事業形態に変化していくと思われます。
ただ、事業者の祖業が造林か造材かで、設備投資や人材配置が異なる特徴を持っていたりします。
素材生産業は最新の高性能機械やアタッチメント、集材運搬重機を取り揃えていたりします。
一方で造林業は、一声で多くの季節雇用労働者を集めるノウハウがあったりするのです。
まとめ、木材流通に欠かせない素材生産
どの業界にも聞き慣れない用語はあるものです。
隠語と勘違いされやすいですが、紹介した素材生産業は、日本標準産業分類に登録されています。
求人や公的申請でも業種で使われている正式用語です。
融資を受けようと銀行に行き「素材生産業です!」と言っても、キョトンとされる事があります。
素材生産は木材商品のカワカミ
環境で注目されている木材丸太の生産は、素材生産からスタートします。
木材は建材や梱包材、家具材や燃料、パルプなど様々な使用用途があります。
それらに加工される前に、必ず立木から丸太にする工程を通過するわけです。
今回は用語の解説をしましたが、素材生産業に携わる人々が実は多くいるのです。
木を伐るのは悪とされ「伐採業者は環境破壊」とバッシングを受ける時期もありました。
人工林では素材生産して収益を得ないと、再造林の費用が捻出できません。
すでに広大にある人工林の素材生産は「木を植える」ことと同じくらい大事な仕事だと思います。
高性能機械化した素材生産
最近10年ほどで素材生産業は、ハーベスタ、グラップルなど導入され急速に高性能機械化されました。
一台の価格が4,000万円の機械もあり、国の補助事業の影響が大きいと思います。
素材生産の工程が変わり、人手不足を補う効果は確かにあったと思います。
一方で機械化が進むと急傾斜地だったり複雑な作業は苦手です。
高性能機械化は生産性が上がったものの、素材生産する林地を選ぶことになってきました。
機械の自由移動が困難な林地では、未だに人力作業に頼らなければなりません。
これからの伐採計画にも変化が出てくると思います。