林業は建設業よりも危険な仕事です。
災害発生時の死亡率が高いことで知られています。
見た目よりも立木は重量が重いです。
さらに林地は足場が悪いので、安全対策と知識経験が必要とされます。
重大災害で最も多い事故原因の一つとしてかかり木の処理があります。
林業従事者なら必ず知っている「かかり木」について調べました。
かかり木とは何か?

かかり木とは、木を伐り倒す時に予定と違う別の方向に倒れてしまって、他の木にもたれかかってしまう状態をいいます。
二本の立木で「かかり木」と「かかられた木」があるわけです。
時には自然の強風で立木が倒れ三本以上で折り重なって、多重のかかり木になっていることもあります。
なぜ、かかり木は危険なのか?

倒れかかった立木は先端が地面に着いていません。
完全に倒れた状態ではないので、いつ倒れ落ちてくるかわかりません。
適切な方法でかかり木を処理しないと、予想と違う方向に倒れたり跳ね上がってきたりするのです。
一見、木が普通の状態に見えても、弓なりになって強い力がかかっていることがあります。
ベテランでもかかり木で被災するのは、経験したことがない予想外の木の動きにあります。
重傷、死亡事故につながる
かかり木の状態になった時点で、すでに重大災害の一歩目が進行していると言えるでしょう。
立木は成長した主伐級になると、1本で重さが2~3トンになります。
それがとても不安定な状態でもたれかかっているのです。
いつ、何かの拍子で滑り落ちたり倒れてきてもおかしくないのです…。
自動車のような重さの物体が落ちてきたりして人に激突するので、重傷を負ったり死亡事故につながります。
かかり木が発生するわけ
伐倒経験が未熟だったりと人為的なミスがありますが、危険なかかり木がどうして発生するのでしょうか?
弦がらみは、かかり木発生の原因に

草木類の弦(つる)が原因となる事も多いことがよく知られています。
立木の上の方の枝が隣接する立木と弦で絡み合っていることがあるのです。
伐倒の反動で弦に引っ張られて木の倒れる方向が変わるのです。
弦は枯れていても強い材質を持っていることがあります。
ツルウメモドキやヤマブドウなど作業の前に弦が絡んでいないかなど、状態をよく確かめなければなりません。
既にかかり木状態の風倒木

強風で倒れた風倒木が隣接する木にもたれかかっていることがあります。
かかり木と同じ状態で風倒木はいつ倒れてくるかわからないので危険木として注意です。
立木が折り重なるように倒れて弓形になっていることもあります。
応力がかかっている風倒木の処理は、重機を使ったりウインチなどで安全な作業を選択しなければなりません。
やってはいけない!かかり木の処理方法
一定の比率で伐倒時にかかり木が発生することはしょうがないことです。
林業の安全教育では、何度もかかり木処理方法について説明をされています。
危険な状態のかかり木の処理で、やってはいけない行為があります。
かかられた木を伐る

当然ですが、かかられた立木を伐倒することは厳禁です。
倒れる方向が予測できないことや、かかり木となった木が突然落下してくる可能性が高いです。
伐倒中にチェーンソーの振動でかかり木が落ちてくることも考えられます。
想定外の力がかかっている状態だと予定方向に倒れてくれません。
かかられた木を伐倒することは極めて危険です。
かかられた木を伐る行為は、多くの死亡事故に直結しています。
別の木をかかり木に倒して解消する(浴びせ倒し)
浴びせ倒しと呼ばれるかかり木の処理方法も禁止です。
浴びせ倒しとは、かかり木に別の木を倒して浴びせるように伐倒する方法です。
かかり木を一気に解消しようという方法です。
以前はこの方法でかかり木を解消していたといいます。
伐倒木が考えてもいない方向に跳ねてしまったり、そもそも危険な状態であるかかり木の近くにいるのが非常に危険です。
浴びせ倒しがうまくいかなくて二重にかかり木になり、二次災害で危険性が増すことも考えられます。
かかり木を切断(元玉伐り)

かかっている方の木を細かく伐って解消しようと玉切りすることも危険です。
突然、かかり木が落下したり滑り落ちたりする可能性があります。
「元玉伐り」と呼ばれ禁止とされています。
先端だけでもたれていて木全体に力がかかり、ねじれたり弓なりになっていることもあり得ます。
元玉伐りにより力が解放され、その反動で木が動いて作業員が強い打撃を受けることがあります。
かかり木の放置
かかり木は危険な状態なので、そのまま放置することも禁止です。
他の作業員がかかり木に気づかないで、その真下を通過してる時に落下して死亡事故が起きたこともあります。
かかり木が発生したら他の作業員全員に知らせることや、やむを得ず現場を離れる時は立ち入り禁止の表示をする必要があります。
かかり木が発生したら…

啓発にもかかわらず、かかり木処理が原因の林業災害は毎年発生し死亡事故が発生しています。
熟練者が気をつけていてもかかり木は発生します。
枯損した倒木が既にかかり木になっていることも頻繁にあります。
林業災害事故の原因で最も重視されるのがかかり木処理です。
それでも災害が多いのは基本を守れていない事業者が多いのかもしれません。
作業中断と迅速な処理がカギ
かかり木が発生した場合は伐倒作業をすぐに中断します。
周囲で作業している人がいれば、ただちに危険が及びます。
かかり木が発生した事やその場所を知らせて全作業を中断させます。
そして、放置せずに早くかかり木を処理することに専念します。
山の中とはいえ、この危険に気づかないで誰かが近づく可能性もあります。
適切な処理方法や重機を使って迅速にかかり木を取り除くことが最優先で求められます。
できるだけ、かかり木が発生しないように

処理が危険なかかり木は、できるだけ発生を抑えなければなりません。
全作業が中断になりますので、素材生産の効率も落ちてしまいます。
伐倒者が経験不足ですと、頻繁にかかり木が発生してしまいます。
かかり木発生を予防するには、熟練技能と計画的な伐倒作業が大切です。
間伐をしていない密集した山林では、かかり木がおきるリスクが高まります。
風倒木が存在している山林は、二重三重のさらなるかかり木の発生が懸念されます。
チームワークがカギ
伐倒でかかり木を発生させないためには、チームワークが重要です。
- 伐倒する順番や方向をしっかり話し合う
- 決まったことを理解してるか確認
- 作業員どうしが情報共有し連携
かかり木が発生しにくい伐倒順番と計画をたてて全員に理解させましょう。
こまめに小休憩を入れて、次の作業直前に何度も確認し合うことが大切です。
どこまで進んだか等こまめに伐倒作業進捗状況をチーム全員が把握する必要があります。
危険のはじまりが無いかを監視しあうことが、かかり木発生予防の一つと考えられます。
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