脱炭素の環境問題に取り組むために林業の役割が長期的に重要になってきます。
外国産輸入木材におされて手入れが中途半端になった放置森林も多く、それらを再び手入れしてCO2を吸収する自然環境と木材資源利用を考える時が来てます。
それなのに「林業はキツイぞ…」「林業はやめとけ…」と、ネットでもたくさん情報をよく見ますよね…。
林業に限らず農業を含めて一次産業全般は、たしかに低賃金で若い人に人気がありません。
農林水産業が低賃金である話題は長くなるのでココでは除き、給料以外で林業が人気ない理由を考えたいと思います。
肉体労働なのでは?

林業は重い丸太を担いで肉体労働のイメージで体力勝負。
そんなことできないし、毎日だと身体がキツそう…。

丸太を積み上げたり担いだりするような人力作業はなく、それら全て機械力ですのでご安心を。
チェーンソーや刈り払い機を持つのでデスクワークに慣れた方は、最初はキツイかもしれません。
機械力が進化してきた

カマや斧ではなくなりましたが、枝払いで使うチェーンソーや草刈りで使う刈り払い機を一日中持って仕事しなければなりません。
上手な使い方や動きがとれないと、慣れないうちは腰痛になったりします。
一方で、一番キツイと思うのは植林の時の苗木の運搬で、15~20kgの苗木袋を持って斜面を登らなければなりません。
ドローンの苗木運搬は運用面でまだ課題があります。
ちょっと工夫すればラクになる運搬方法もあるので、運搬の機械・道具利用は弊社で重点的に試しています。
天気にふりまわされる

雨の日でも濡れながら作業しなければならないのでしょうか?

ほとんどの林業作業は雨天ではできません。
天気予報の精度が上がりましたので、休みは前日までには連絡するようにしてます。
雨天は基本的に休み

荒天の日に森林で作業するのは危険で作業性も悪く効率が上がりませんので、基本的に雨天時は休みになります。
長雨が続くと林道や現場がぬかるんだりして晴れてても乾くまで作業ができないことがあったり、天気の急変で作業を切り上げて山を降りることもあります。
林業では雨天時の作業効率が悪く事故の危険が増大しますので、建設工事と比べて雨で仕事を休むことが多いでしょう。
冬山は雪が多いのでは…

山は雪が多く降るのから朝から雪かきが大変そうで、作業前にクタクタに疲れそうですが…

冬山の雪を使った作業道や土場づくりは、コストダウンのための古くからの知恵です。
除雪は重機を使うので手作業はほとんどありませんからご安心を。
重機で除雪します

北海道の南部東部を除いて山林では降雪地域が多く10月から降り始める年もあり、林業の冬の朝は雪かきから始まることがあります。
広大な造材現場では手作業でとても追いつかず、重機を使った機械力で除雪しますので、作業員によっては、「帰宅してから家庭の雪かきの方が手作業なので面倒だ…」と嘆く人もいます。
余談ですが、森林の朝の雪のにおいは大自然を感じられて格別ですよ。
朝が早い

林業は朝が早いようですが、早起きできない…

前述のとおり重労働ではないものの一日屋外で作業していると、夕方には疲れがきて自然と早寝になります。
生活リズムが規則正しくなったせいか、健康的になったり元気になる人もいます。
林業作業はさわやかなAM勝負

林業は出勤時間が早いので早起きしなければなりません。
午後になると雨や風がでてきたり疲れが出やすくなり生産性が落ちますので、林業の仕事は午前中が勝負です。
夜型人間の方は最初慣れるまで大変かもしれませんが、中高年になるほど早起きの方が多く林業は高齢者向きなのかもしれません…。
スマホの電波がない

森林内は電波が届かないので、休憩中にスマホを使ったりできないのかしら?

スマホに追われる毎日から少しの時間を脱して空気が良い森林で仕事してみませんか?
山で宿泊するわけではありませんので、毎日の帰宅後にはスマホが使えます。
少しの間、ネットから離れよう

基本的に森林内には携帯電話の電波は無いので、朝出勤してから山を降りるまでインターネットを使うことができません。
尾根や山頂付近は意外と携帯電波が通じることがありますが、現在の通信状況では休憩時に動画を見たりすることができません。
移動中や休憩中の動画はダウンロードしておいて楽しむしかありませんが、日常、手放せないスマホから一時でも離れた環境に居られるのも良いものですよ。
森林は野生生物が多いのでは

クマ出没が増えてるようだけど林業現場は安全なの?

深刻な問題ですが、現在のところ林業でクマに襲われる事故は稀です。
しかし、今後は増える可能性が有るので自治体と連携して対策していく必要があります。
クマには注意してます

近年はキツネやシカなどの野生生物を林業の作業現場で見ることが多くなり、中にはクマを目撃した作業員も増えてきました。
街の過疎化がすすむ山間部は人口が減って休耕地や空家が増え、野生生物が個体数を増やす条件が揃ってきました。
シカやキツネならクルマの運転で事故に気を付ければ良いですが、クマに遭遇すると襲われる危険があり人命にかかわります。
林業の作業現場でクマに襲われた人身事故はわずかですが、民家や畑に熊が出てくることも多くなり自治体の対策に協力していく必要があります。
虫がたくさんいる

虫に刺されそうでイヤ…

一年中、虫がいるわけでなくベテラン作業員は虫に刺されにくいです。
その土地に合った防虫ノウハウがあり先輩たちが教えてくれます。
虫は夏場だけ、防虫ノウハウも

森林には蚊やブヨ、アブ、蜂がいますので、虫嫌いの人はとても気になります。
林業はいつも山林内なので、建設業と比べても虫に悩まされるのではないでしょうか?
最初は気になってしょうがないのですが、寒くなるといなくなり、古いものから最新まで防虫対策が色々あって、次第に慣れていきます。
死傷事故が多いって聞きますが

林業って危険で事故が多いと聞きますが…

それは事実で林業の安全対策、安全教育が必須です。
安全意識が希薄な木材業者で働くのはやめた方が良いと思います。
安全を軽視する林業会社には就職しない

林業の労働災害の発生率は災害発生度合いを示す千人率でみると、全産業の2.3に対して林業は25.5と10倍以上死傷者数割合が高いです。
ビル建設など高所作業が多く危険そうな建設業ですら4.5なので、林業は災害の発生率がかなり高いといえます。
身を守るため、木材会社に入社する前には必ず安全対策のことを質問してください。
※数値は令和2年度1年間で1000人あたりの休業4日以上の死傷者数の割合。
まとめ、林業の仕事内容はアウトドア派に合う

いろいろ疑問についてお答えしましたが、林業の仕事内容をきついと感じるかは個人差があります。
屋外スポーツ、アウトドアが好きな方は馴染みやすく、インドア派やデスクワークがしみついた方は林業の仕事に慣れるには時間がかかるかもしれません。
逆の発想ですと、ゲームやネットサーフィンの時間が多い方は、ネットから一時的に離れられる林業が健康面で良いのかもしれません。
ゲームがうまい人は、たくさんボタンがある高性能林業機械操作も上手だといわれてます。
全国で45,000人程しかいない林業従事者が森林で経験することは、一般の仕事では経験できない特殊なことです。
林業現場ではあらためて自然と人間の付き合い方を考えさせられます。
古くから林業の働き方は様々
林業は伐採の造材と植林の造林に大きく分けられますが、古くから季節雇用で働く人も多い業界です。
出稼ぎ、兼業農家が季節雇用の林業従事者になることも多かったのです。
現在は、「冬は九州で過ごすので夏場だけ北海道で仕事をしたい」とか、「夏は旅行や趣味を優先したいので冬季造材だけ働きたい」という人もいます。
それぞれの事情に合わせて企業も雇用環境を用意しなければならないのでしょうね。