林業の仕事は、植林して育林して木を伐って、片付けてまた植える作業です。
林業界では、木を伐る伐採は「造材」と呼ばれ、木を植えるのは「造林」といわれます。
農業でいえば収穫と植付けですね。
雪深い北海道道北において、古くから木を植える造林は盛んでした。
先人たちは伐採してからも植えて育てて、将来の収穫を期待してきました。
今回は、造林の仕事内容について紹介します。
造林とは
造林とは、漢字のとおり「林を造る」ことです。
木を植えて育てて森林を作ることをさしてます。
ヒトが作った森林を人工林と言います。
植林は戦後からのイメージがありますが、日本国内の造林の歴史はもっと古く平安時代にさかのぼります。
昔から資材や燃料として木材需要があり、造林は欠かせないものでした。
仕事内容は?
現代の造林の作業内容は次のように分かれます。
- 地拵え(じごしらえ)
- 植え付け(うえつけ)
- 下刈り(したがり)
- 除伐(じょばつ)
- 間伐(かんばつ)
皆さんは聞き慣れない言葉だと思います…。
木を伐る伐採が終わると、植林に向けて準備作業が始まります。
最初に行われるのが地拵え作業(じごしらえ)です。
近年は伐採と地拵えを一気に行うことで効率を上げ、コストを下げようとする作業形態もあります。
つまり、伐採すると同時に次の植林の準備をしようという試みです。
効率を考えるととてもいい方法ですね。
季節が春(秋)に限定される植え付け
しかし、造林作業の植え付けは、冬期に不可能です。
留萌管内のように雪深い地域はなおさらです。
苗木活着率のことからも春に植え付けるのが効率よく、ほとんどの地域で植え付けは春に集中します。
あまり知られていないのですが、豪雪地では雪が降る前の秋にも植林作業がされます。
植付け直後の苗木が外部環境に弱い状態を降雪が守ってくれてるからです。
さらに春には雪解け水で、根を乾燥から守ってくれるのです。
ただ、苗木の本数や植え付けの手が限られるので、地域や現場が絞られるのも事実です。
地拵え(じごしらえ)
伐採が終わって木材が搬出された後には、枝やつる、伐倒木の一部など残材が残ります。
それらは林地土壌の肥料となり苗木の栄養にもなります。
伐採後の林地で、苗木を植えることができて育成しやすいように準備するのが地拵え作業です。
機械地拵え(きかいじごしらえ)
バックホウのバケットやグラップル等の重機で、植付場所を耕すのが機械地拵えです。
表土が深く拡販されるため、その後の雑草木の繁茂を抑制できます。
人力に比べると、地拵え作業時間が短縮され能率が上がります。
機械が入れない斜度がきつい斜面などでは、人力に頼るしかありません。
クラッシャー地拵え
将来に期待されているクラッシャー地拵えは、機械地拵えの高性能機械版です。
枝条などの残材を粉砕して散布できます。
この方法で地拵えすると雑草木が生えにくくなり、その後の下刈り作業の手間が低減されると見込まれてます。
人力と比較すると作業時間が大幅に短くなり、雑草木抑制効果も高くなります。
下刈り作業も含めた事後コストが、60%以上抑制できるとする研究結果もあります。
しかし、高性能機械の価格が高価で設備投資が重くのしかかるため、数年にわたる下刈りコストの配分も含めた判断がポイントとなりそうです。
植え付け(うえつけ)
北海道では一般的にトドマツやカラマツ、エゾマツなどを、ヘクタールあたり約2000本植えます。
植付作業は複雑な作業なので人力に頼ることが多く、機械力の植付作業は今も限定的です。
苗木の運搬は重くて重労働です。
険しい地形の山林を中心に少しずつですが、苗木運搬にドローンが使われはじめました。
仮植(かしょく)
植え付ける現場まで持ってきた苗木をそのまま放置していると、根が乾燥して枯れてしまいます。
植栽現場が何ヘクタールにもなると、数万本の苗木を運ぶことになります。
苗木は仮に植え付けておかないと根が乾燥します。
それを防ぐために植付現場近くに仮に植えておく作業を仮植といいます。
仮植は長くても2週間以内としないと、苗木の活着率や生育に影響が出てきます。
効率よく植え付けるため、植付現場のどこにどの数量の仮植をするのかの計画も重要です。
1号苗木、2号苗木とは
苗木の種類は樹種はもちろんですが、その大きさで規格されて分けられてます。
北海道のカラマツにおける苗木規格は以下です。
- 根元径10cm苗長50cmは1号
- 根元径7cm苗長35cmが2号
カラマツは種まきから3年ほどで苗木として出荷するそうです。
需要や育成状況、または植付現場の事情により、1号、2号苗木が使い分けられます。
下刈り(したがり)
農業でも植えてから放置していると雑草に負けてしまい、作物の生育がうまくいきません。
下刈りとは、苗木を守るために雑草を刈り取る草刈り作業のことです。
トドマツ、カラマツ苗木は雑草の成長スピードに負けますので、植え付け後3~5年まで下刈りが必要です。
幼木は太陽の光がたくさん必要で、雑草の陰に隠れていると成長できずに枯れてしまいます。
一般的に苗木の先端が雑草木より高くなっていれば、下刈り保育は終了です。
環境によって苗木の成長スピードが遅ければ、下刈り回数も増えます。
留萌地方の大きな笹
植栽した苗木の成長を阻害する雑草木の代表格に笹があります。
笹の背丈が高いと、何年も下刈り作業を続けなければいけません。
苗木には成長のばらつきがあるため、植付後、数年は苗木樹高をよく観察しなければなりません。
留萌地方の笹は、高さ2mにも達するクマイザサやチシマザサです。
最近、青汁でも有名になってきた”熊笹”は俗称であり、クマイザサが正式名称です。
一方で北海道東部の十勝や釧路にはミヤコザサという0.5mほどの低い笹もあり、下刈り期間は短くなります。
除伐(じょばつ)
除伐とは生育不良の幼木や、幼木の成長を阻害する木をとり除くことです。
成長が早いカバやヤナギ等は、植付けした苗木の成長を阻んだりします。
留萌のような豪雪地帯では冬に雪の下になって重みで生育が悪くなったり、折れ曲がったりした植栽木もあります。
健全な木の生長を阻害しないように、それらを取り除くのが除伐作業です。
間伐(かんばつ)
植栽してから、数年、十数年経過すると、木が混み合ってきます。
密集した林内は太陽の光が届かなくなって薄暗くなり、木の成長が阻害されます。
木を間引きして、人工林のさらなる成長を促すための作業が間伐です。
間伐は植付して20年後なども行われるため、間引きした木も間伐材として利用されます。
将来へ造林は続いていきます
造林とは森林づくりと言い換えることができます。
森林とはいっても人工林なので経済性が求められ、長い期間で搬出される木材(丸太)の収益も必ず必要です。
農業のように植付けて収穫し、得た収益でまた植付けするのです。
造林の歴史は古く、日本では1000年以上前の平安時代から行われているそうです。
時代の変化で造林の目的が、資源の生産からCO2の吸収に変わってきました。
どちらにしても我々が生活していく上で必要で重要なことなのです。
デジタル化、ロボット化した時代が来ても苗木を育てて資源を生産する造林は続くと思います。