立木は何に使われているかわかりますか?
住宅建材としてホームセンターで売られるよね…
山林の立木を見て、皆さんはそう思いますよね…。
間違いではありません。
でも、国産立木の使い道はその他にもう一つあります。
あまり気づかないのですが、誰でも身近なモノです。
木の使い道は大きく二種類に分けることができます。
「気づきにくいもう一つは何なのか?」と、「どうしてなのか?」を紹介します。
一般材と低質材
住宅建材や製材を作るには製材工場で丸太を加工しなければなりません。
求められる丸太は、長くて曲がっていない節がない木を求められます。
もちろん芯が腐っているのはNGです。
建築材や板に加工するわけで、丸太の品質がそのまま製品の品質に直結するからです。
でも、山林に生えている立木は、そんなまっすぐの良質な丸太ばかりではありません。
必ず発生する低質材
ほとんどの山林伐採において、価値が低い丸太が必ず発生します。
立木は全てまっすぐに生えているわけではありません。
素材丸太の低質材とは、利用価値の低い木材のことをいいます。
伐採すると曲がったり腐っている素材もたくさん出てきます。
ねじれや二股三股になった木、裂けたり変形したり、成長不良の細い木もあるのが山林の現実です。
弊社地域の北海道北部沿岸では、平均で50~60%の製材用にならない低質材丸太が発生します。
一般材は単価が高い
製材工場に納入される丸太は、高品質で希少価値があるので単価が高くなります。
角材や板を作るために製材として使える丸太を一般材といいます。
一般材は、板材や角材の製材だけではなく、合板工場にも出荷されます。
「一般材:低質材」の素材丸太単価の違いは、1.5:1やそれ以上の差があります。
山林の価値を上げるには、できるだけ単価の高い一般材を生産する方が良いのです…。
原料材とは?
林業や木材業界の人たちは「原料材」と言ったりします。
原材料(げんざいりょう)ではありません…
原料材とは、ざっくり言うと低質材のことを指します。
伐採で発生する曲がりが激しい木や、腐っていたり製材工場では断られる細い間伐材などです。
原料材の語源は製紙原料から…
冒頭で申しました「もう一つの使い道」とは、製紙工場で使う丸太です。
印刷紙や新聞紙、トイレットペーパーなどの製紙原料には、かなり古くから木を使ってきました。
製紙工場に運ばれる丸太が製紙原料なので「原料材」と呼ばれていたのが語源だと思います。(諸説あり…)
原料材は、酪農で家畜の寝床になる敷き藁や、土木資材としておが粉、チップ材としても使用されてます。
量としては圧倒的に製紙会社が原料材を引き受けてくれていました。
紙の使用量が激減
しかし、皆さんご存じのとおり、時代はデジタル化です。
新聞紙や印刷紙の消費が激減し、今後はさらに減り続ける予測です。
近年では、リサイクルの再生紙技術が向上され、原料の50%超が古紙を使っています。
ネット販売増加で物流ダンボール紙が健闘しているものの、用紙では原料材を使用しなくなってきたのです。
「角材と紙」から「CLTと燃料」へ
建材用一般材は必要だけど、低質材は要らない…
これでは山林資源があっても、50%の低質材を伐り捨てておくわけにいかず伐採ができません。
そんな中、脱炭素エネルギーとして木質バイオマス発電が注目されてきます。
各地に発電工場が建設され稼働をはじめました。
低質材は、製紙原料から木質バイオマス燃料へ
木材を燃やして発電するのが木質バイオマス発電です。
発電のためにタービンを回す燃料となるので、曲がっていたり細かったり腐っててもOKです。
以前は製紙工場に出荷されるパルプ用原料材が、そのままバイオマス燃料材となります。
木質バイオマス発電は再生可能エネルギーとして国際的に認められています。
森林に蓄積したCO2は木材を利用して排出しても、植林により再びCO2を吸収してくれるから、という考え方です。
ただし、違法な伐採からの木材やパーム油を燃料とした発電のように、再生が困難な熱帯天然林を伐採していくような焼き畑伐採は、再生エネルギーとして認められていません。
以前は製紙用原料材だった低質材が、木質バイオマス発電の燃料材に置き換わっています。
これまでの合板需要+CLT特需も…
一方の一般材も使い方が少し変わってきました。
従来通りの住宅建材などの需要が大きく落ちてきたわけではありませんが、建築設計に変化が出てきました。
4階建て以上の木造ビル設計がそれです。
木造ビルにはCLT(直交集成板)が使われます。
CLTはいわば合板で、需要の拡大が確実視されてます。
国内工場が少ないため、CLTは供給面に課題がありますが、今後の一般材の需要に大きな影響がでそうです。
木質バイオマス発電用の燃料材のあり方
世界的な脱炭素の取り組みや原子力発電の代替えとして、再生可能エネルギーの利用が進んでいます。
太陽光や風力といった再生可能エネルギーの一つとして木質バイオマス発電があります。
その原料は伐採で発生する低質材が主です。
低質材の新たな利用法である木質バイオマス発電は、山林価値を維持してくれてるとも言えます。
未利用木材って?
一部の木質バイオマス発電工場は、伐採後に山に放置され使用されない木材を原料に使用して、余すことなく資源を使おうとする取り組みを始めてます。
未利用木材とは、伐採時に山に放置される枝や葉などのことです。
運ぶとコストがかかるのと、販売先がないので山林で自然分解され、植林した苗木の肥料となります。
未利用木材は大雨で河川やダムに流木として発生する問題もあります。
枝条が大量に放置されると災害の原因となったり、虫害の発生源ともなる可能性があります。
低い販売価格に対して、枝や細木は運び出すコストが高価です。
伐採現場でチップ化したりして生産性を高めようと、試行錯誤し努力してます。
地拵えがしやすく、植林でも好評価
弊社は植林の仕事を受注してます。
苗木植付の前に「地ごしらえ」という、伐採後の枝葉などの片付け作業があります。
未利用木材を搬出した現場はキレイで、枝などの片付けがないので植林作業の妨げになりません。
地ごしらえ作業が軽減されるので未利用木材の利用は、植林する者から歓迎です。
人力作業が多い植林は、相変わらず人手不足に悩まされ続けてます。
未利用材を燃料用に利用する取り組みは、造林育林に好影響があります。
発電用木材の基準はあるの?
国内で木質バイオマス燃料に使われる低質材は、曲がりや腐朽がOKです。
とにかく安価な低質材を求められます。
燃料なので、曲がりやフシの数などの細かい品質規定はありません。
価格は以前の製紙用原料材と同じくらいです。
泥や土が付着していたり金属が混入していると、バイオマス発電工場の設備が破損することがあるそうです。
低質材の異物混入には、受け入れ基準を厳しく設定しています。
また、合法伐採から搬出された木材であることの証明も必要です。
盗伐や違法な伐採、環境破壊につながる一部の輸入材は認められてません。
まとめ、無駄なく山林価値を高めるために
高単価の一般材をたくさん出荷したいのは当たり前ですよね。
伐採したときに低質材の比率を少なくすることが造材技術に求められます。
作りにくい長くてまっすぐな丸太
現場では長くてまっすぐな丸太が、なかなか作れません。
まっすぐに成長している立木ばかりの山林って、あまりないと思いませんか?
パッと見でまっすぐに見える立木でも倒してみると、意外と曲がってたりねじれていたりします。
玉切りするときに、短かければ少しは直材を作りやすいです。
ただ、長尺を欲しがる工場が多く、生産性や製品オーダーによると思いますので、難しいものですね…。
工夫を重ねる未利用材の搬出運搬
枝や葉の未利用材は、搬出運搬コストを賄うことができません。
¥8,000のコストをかけて¥7,000で売っているようなものです。
未利用材は▲¥1,000で商売にならない…
それでも何とか未利用材を活用しようと、伐採現場でチップに加工できる機械を導入したりしている会社もあります。
枝条はそのままトラックに積むと、フワフワしてて空気がほとんどです。
積み込む密度を高めるためにチップ化して運搬の生産性を上げてます。
用途が違えど丸太は有効に使う時代が…
一般材と低質材は使われ方が大きく違いますね。
どちらも無駄なく山林資源を使おうと、伐採現場では日々工夫しています。
ウッドショックや電力問題は今や社会問題になっています。
用途が違うものの、効率良い伐採作業で事故無く安定して供給するために検討や計画が大切です。
放置されてる山林を有効に利用する時がきている気がします。