変わるのか?これからの林業を予想する

これからの林業の未来を予想する

林業のはじまりはいつからでしょうか?

伐採するだけではなく「植えて育てること」をはじめた頃からです。

その記録があるのが12世紀頃とされています。

時代が変わりましたが、林業は人類が900年もやってきた仕事です。

この数年でなくなることは無いでしょう。

ただ、宇宙からの電波を利用しデジタルを駆使した林業は、これまでとは全然違う作業内容になるかもしれません。

伝統産業、林業がITで変わる?

伐採だけじゃないのが林業の定義

林業は、Wikipediaで次のように定義されてます。

  • 経済的利用を目的として樹木を伐採し、丸太等の林産物を生産する。
  • 木材を生産するために植林、間伐、枝打ち、下草刈りなど育成、管理を行う。

つまり、伐採して植林する仕事です。

太古の人たちは炭や薪のエネルギーを得るために伐採だけしていました。

人口が少ないので伐採だけでも問題ありませんでした。

しかし、次第に人口が増えてくると、伐採だけではハゲ山になり木材がなくなります。

継続的に森林を管理しなければ、資源が皆にいきわたらなくなります。

必ず来る林業デジタル化

森林調査はドローンが欠かせない

一次産業は変わりつつあります。

農業や酪農はIT技術を取り入れて、少人数で経営する事業体が増えました。

林業は山奥なので、農業や酪農と異なり電波がありません。

コレが大きな原因で、林業はほとんどデジタル化が進んでいません。

しかし、まもなく宇宙開発が進み、地球上で電波が届かない地域がなくなります。

コレに大きな恩恵を受けるのが林業です。

人里離れた山奥にもIT化の波が必ずやってきます。

林業スキルを身に付けよう

危険が多いためスキルを上げるには一定の経験が必要

近い将来、ホワイトカラーはAIに仕事を奪われます。

メタバースに参入するには高いITスキルが必須で、それも長く続けることが難しいでしょう。

資本力の強い者が勝ち残ることになります。

現実世界で木材需要や育林仕事がなくなることはないでしょう。

若い人なら、今パッとしない林業に注目してはどうでしょうか?

危険で特殊な林業を安全で生産性高くまわす技術は、経験に時間がかかり簡単にマネできません。

林業は500年以上も日本で続く伝統産業です。

理解するにはある程度の経験が必要です。

生まれながらにIT能力がある若者が、時間をかけて林業スキルを磨くと強い気がします。

脱炭素で地球環境にかかわる林業者が、社会から尊敬されて高い報酬をもらう時代が来てもいいような気がします…。

先進国だって木材を輸出している

木材輸出は新興国だけではなく先進国も多い

2018年の外国産輸入木材量は、1億5700万m3です。

日本に輸入される木材は、すべて新興国からではありません。

北米や欧州などの先進国からも日本に木材が輸入されています。

古くからカナダやスウェーデンは、木材製材品の輸出先進国です。

安くない人件費で製造されているわけで、木材輸出は新興国だけのものではありません。

日本から製材品を輸出する未来だって十分あり得ます。

林業の働き方が変わる?

古くから林業従事者は季節雇用が多いのが特徴です。

農業ができない冬期だけ林業で働く人が多かったのです。

近年は求職理由がちょっと違うようです。

10年で林業従事者数が13%減

脱炭素や環境問題で林業が注目されてきました。

しかし、残念ながら、過去10年間で一割以上の林業従事者が減っています。

農村部の高齢化や人口流出は顕著で、このままだと増える見込みがありません。

数字だけ見ると林業従事者総数が減っていることは確かです。

若者の林業参入は?

脱炭素の環境取り組みが追い風で、若手林業従事者が増えている!

コレは少し間違いです。

確かに様々な就労支援の取り組みで、社会的意義を感じる若者に注目されています。

一定数の参入者が毎年いることは確かです。

しかし、林業従事者総数は減り続けています。

つまり、新規参入者が定着していないことになります。

人間関係や労働環境が問題なのかもしれません。

元祖、多様な働き方の林業

冬の北海道の屋外仕事は限られる

最近は働き方が変わり、高収入長時間労働では人材が集まりません。

労働よりも趣味を優先する人も多くなりました。

賃金が思うように上がらない中で、働く意味を深く考える人が多くなったのでしょう。

雇用側は待遇を見直し通年雇用を打ち出している林業会社も多いです。

しかし、本音では特定の季節だけ雇用したい会社も多くあります。

雪国において冬の収入は限られており悩みの種です。

雪国には古くから出稼ぎ労働者の慣習があります。

農業ができないので本州に建設や大工等の仕事で出稼ぎに行ってました。

その点において林業の素材生産業は冬がメインです。

冬だけ林業したい!

こんな要望にもこたえることができるのです。

自然派趣味と季節雇用

人によりますが北海道の良い季節と言われるのは春から秋です。

温暖化の影響でやや暑くなりましたが、夏が過ごしやすいのも北海道の特徴です。

アウトドアやスポーツ、キャンプをされる方は北海道の夏が良いことを知っています。

北海道民は「冬さえなければ最高なのに…」とよく言います。

道民
道民

除雪が大変で…

その冬を待つようにしてパウダースノーを求めて北海道に来る方もいます。

ウインタースポーツ好きには冬の北海道は憧れのようです。

北海道の雪質は最高!

今は夏か冬に林業をして、半年を自分の趣味に使う方も増えてます。

今は少ない林業プロが増える?

収益を見極められる林業のプロが求められる

林業に詳しいといわれる人は「木の種類を見分けられるだけ…」だったりします。

樹種がわかるからといって、林業作業を生産性高く効率的に進められるか?は不明です。

  • 重機に詳しくても効率よく作業できない
  • 現場経験豊富でも数量を把握できない
  • 数字で現場状況が想像ができない

林業作業には、地形や人員配置、安全対策、設備配置、伐採手順、天候など、変化する様々なファクターが存在します。

コレらが変数で、現場により作業効率が大きく変わります。

事前に現場を調査して着手する季節を決めたり、準備や段取りすることで作業効率が大幅に変わります。

夏雨がある季節に泥だらけになって作業するリスクを背負いながらやるよりも、確実に雪が降る冬季に作業すべき現場もあります。

それらは現場収益を左右します。

どんな現場でも効率よく安全に的確な判断ができる林業のプロは、官民問わず今の日本に多くいません…。

計画で生産性が激変

伐採計画を進めることにも林業のプロが必要です。

土質がもろく崩れやすい林班の伐採を先行すると、全体の山崩れが起きやすくなったり林道が使えなくなる恐れがあります。

そうなると莫大な林道工事費用が発生したり、山奥へ行くことができなくなります。

  • 山奥の難しい現場から着手すべき
  • 成長が見込めない間伐なら主伐に
  • 植林時期を考えてから伐採を決める
  • この現場は10年計画が必要だ
  • 表土がもろいので伐採後すぐに植林を

このような判断が適切にできない森林計画者、管理者がいます。

経験不足で現場をよく理解していないからです。

また、伐採から植林をつなぐことで効率的に進める流れが大切です。

近年は伐採業者が植え付けを考えて、伐採時にその後の植栽をしやすいように気をつかってくれます。

従来は分業型で伐採と植林は別事業者でした。

これではそれぞれの仕事を完結すればそこで終わってしまい、山仕事の連続性が途絶えます。

伐根をどうするのか?とか、枝などの片付け方も変わってきます。

収益管理できる林業者が求められてる

さらに林業経営を強化して利益を上げる能力を持ち合わせるプロも少ないです。

計画を立てて実行管理し、販売して収益を上げる企画力や営業力が求められます。

森林機能に詳しい学者知識だけでは経営できません。

林業収益を計算できるプロが日本国内にとても少ないです。

素材生産は材積や重さの係数、歩留まり、作業進捗状況など、価格や納期を出すときに影響する様々な項目があります。

数値で捉えて収益につなげる能力が要ります。

「モノを仕入れて売るだけ…」よりも難しいです。

リスク管理も大切で、天気によって作業進捗が左右されます。

一日稼働を休むと、どれぐらいの固定費がかかるのか?

コレもしっかり頭に入れておかなければなりません。

緩傾斜林業で浮上する北海道林業

傾斜が15°を超えるとコストがかさみやすい

未来に生き残る木材生産の条件の一つに「傾斜」があります。

木材輸出先進国は長年研究し続け、当たり前のように緩傾斜地で植林伐採してます。

日本において15°以下の山林面積は、北海道が圧倒的です。

北海道の山林地形は木材輸出できるポテンシャルを持っているのです。

緩傾斜林地面積が日本一の北海道

林地集約と計画投資が必要

低コスト化するために緩傾斜地だけでは不十分です。

細かく分かれた林班ごとに伐採植林作業するのは非効率です。

緩傾斜地+林地集約があってはじめて、北海道の木材生産地としてのポテンシャルが活かせます。

現状では不明な山林境界線、所有者などが数多く存在します。

法改正がない事には前に進みません。

消費地や港湾への木材物流を考えた計画を作り、それに基づいた投資が必要です。

伐採順が決まり、林道の敷設計画が決まります。

100年後の木材生産計画が必要です!

雪と凍結を利用する道北素材生産

雪を使うと低コストで素材生産できることも

留萌のような北海道北部は10月や11月から雪が降り積もります。

この頃から伐採の素材生産がシーズン開幕となります。

雪解けがはじまる3月ぐらいまで続きます。

冬山造材は古くから行われていて歴史があります。

冬に伐りだされる丸太は水分量が少なく腐りにくいため、販売先から求められます。

住宅建材や物流梱包材など需要先を問わず、腐りにくい木材は歓迎されます。

除雪が大変そうですが今は機械力です。

雪をかためて仮設作業道を作り、泥地は凍結して通行しやすくなります。

冬期の素材生産は様々な面で効率が良く、機械力が進化した今でも冬山造材は盛んです。

天然林に戻すべき山林もある

収益性が悪い林地は天然森林に戻すことも提案したい

緩傾斜も多いですが、北海道には急傾斜や軟弱地もあります。

そのような林地は古くから林業者の侵入を拒んできました。

高度成長期に無理やり伐り開かれた生産林の一部は、天然林に戻すべきだと思います。

採算がとれない人工林を放置するのではなく、積極的に天然林に戻す仕事が増えなければならないと思います。

赤字の生産林を無理して維持することはやめるべきです。

林野庁では古くから天然林に近い森を作る混交林に取り組んでいました。

採算ベースにのらない成長が遅い広葉樹を植林していました。

どこでも良いから人工林を少しでも広くするというのは、間違いだと思います。

100年計画で稼ぐ生産林に投資して、一方で自然天然林へ戻していく山林があっても良いと思います。

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