衰退する日本経済を木材輸出で救う!
コレはさすがに無理だと思います…。
安全でおいしい日本の農産物はとても人気です。
これからさらに輸出で成功する可能性があるでしょう。
ですが、木材輸出で利益を上げ続けるのは困難だと思います。
国内林業がかかえる事情について考えてみます。
なぜ、国産木材輸出は儲からない?
日本の林業家、林業関係者は真摯に努力している方がとても多いです。
研究も進んでいます。
では、どうして木材を輸出して利益を得ることができないのでしょうか?
欧米の素材丸太生産性は、日本よりも3~5倍は高いと言われてます。
欧米人が一人一日30本の素材丸太を生産するのに、日本人は10本も生産できない計算です。
日本人が怠け者とは思えない…
努力とか働き者とかの問題ではないのです…。
間伐と主伐の採算性
今の日本の伐採は、間伐がメインです。
間伐とは木の間引きです。
選ばれた木だけを伐採します。
残す木もあるので痛めないように作業しなければなりません。
対して主伐、皆伐とは、そこにある木を全部伐ってしまうことです。
なので、主伐は伐採作業しやすくて早く終わります。
間引き作業の間伐自体、伐採効率性が悪いことがわかると思います。
急傾斜地で皆伐はダメですが…
急傾斜地を広大に皆伐して木がなくなると、土砂災害のリスクが増大します。
成長が悪い山林なら再植林計画をたてて早めに植え直しすべきです。
場所によっては生産林ではなく保安林として土砂災害防止に努めるべきでしょう。
日本では主伐をためらう現場が多く、全部伐採して植え直す判断がなかなかされません。
主伐とは人間の手で植林して育てて、収穫期を迎えたのでそれを全て伐採する事。
さらに主伐、皆伐は環境破壊と捉えられがちです…。
感情的に主伐や皆伐をヨシとしない傾向があります。
災害リスクが低い緩傾斜林地でも主伐や皆伐を控えるのは、伐採生産性を下げる結果になります。
伐採する立木で変化する生産性
立木の大きさによって生産性が大きく変化します。
- 樹高18mの立木一本の材積は約0.4㎥
- 樹高30mの立木一本の材積は約1.1㎥
高さが1.7倍なら材積が2.7倍ね…。
伐採する立木の高さにより、三倍近く素材生産量が変わります。
高い木を伐採する方が効率が良いという訳です。
伐採するのは、常に大径木、高木ばかりではありません。
樹種や地形によりますが、樹高30mという木は日本に少ないと言えます。
育林経費
木を育てて最終的に伐採するには下記の過程です。
- 植林植栽
- 下刈り、ツル切り等の育林
- 間伐、被害木整理
- 伐採
高い人件費や燃料をかけないと、素材丸太として生産できません。
育林においても険しい山林地形の非効率性が足かせとなります。
素材丸太価格にそれらの経費を載せると、輸入材に負けてしまいます。
海外では広大な大陸で効率よく木材資源を生産して輸出するシステムを構築している国があります。
長年の研究と投資によってコストを下げ、よく考えられた木材生産物流システムです。
今から長年放置された日本の山林に投資して戦いを始めるなら、多額の資金準備と超長期計画が必要です。
国産材は輸入材に勝てるのか?
林業は木材資源を産み出す生産業です。
取引されるのは木材市場です。
価格競争力がないと生き残れませんよね。
競争相手は輸入木材です。
北欧北米から大量の輸入材が日本国内に流通しています。
まずはそれに打ち勝たない限り、日本産木材はシェアを獲得できません。
商品が売れなければ生産コストを払えないのです。
輸入木材とはハンデ戦?
日本産木材と輸入材の戦いは競馬のハンデ戦にも見えます。
木材は工業品などと比べて質量当たりの単価が低いです。
輸送料金を重視しなければ販売で失敗します。
輸入材は海運コストをプラスした販売価格です。
日本国産木材に海運賃がかかっていませんし、近くの製材工場から運ばれてきてます。
なのに輸送ハンデがある輸入材に国産材が負けています…。
この状態を見ると、現時点で国産材に世界で戦う価格競争力が無いのは誰でもわかります。
生産性を上げないと勝ち筋が見えない
日本国内で生産された素材丸太は年輪が細かくて品質が良いと言われます。
しかし、今の生産性でそれを世界の木材市場に投入しても、売れるのは一部でしょう。
顧客は価格にシビアです。
国際市場で勝ち残るためにはあらゆることを見直して生産性を上げるしかないでしょう。
では、生産性を考える時に何から考えなければならないでしょうか?
そもそも立木の状態での評価をすると、エネルギー資源と似ています。
5,000円の資源があったとしても、10,000円のコストをかけて採掘する者はいません。
木材資源も同様です。
いくら良い立木でも、搬出コストがかかり過ぎるのでは勝ち筋が見えてきません。
全国とは違う地形特性を持つ北海道
山林傾斜は、30度を超えると急傾斜地とされてます。
日本は確かに森林資源は豊かです。
しかし、国土の70%ほどは急峻な山岳地帯です。
他地域と異なる北海道は15度以下の山林が多く、比較的緩やかな地形です。
世界の林業地は、コレくらいの緩傾斜生産地が多いです。
日本国内は山林傾斜がキツい中で北海道林業は、高いポテンシャルを持っています。
では、国内林業はどうする?
「林業にもっと投資して日本を林業国家に…」なんて政策があります。
林業に投資していくのは間違いではありません。
かなり落ちてきましたが、日本は自動車やハイテクなど工業品で世界と戦えます。
医療やロボットなど外貨を稼ぐ手段は他にもたくさんあります。
外貨を獲得しないとエネルギーがない日本は、貧困国になります。
より多くの外貨を効率よく稼ぐためには、最新技術のために研究投資が必要です。
世界中の人を豊かにする必要があります。
工業品やハイテク技術を輸出して外貨を稼ぎ、そのお金を国内林業に投資していく方がコンセンサスを得やすいでしょう。
林業で国産木材を輸出して日本経済復活…
現状でコレはちょっと難しいです…。
分かれる林業投資
数字を意識して産業を見ていけば、何で効率よく稼げるのかが認識できます。
稼げるものをしっかり稼いで、国内林業投資には「守る」「稼ぐ」の二大テーマがあると思います。
- 国土を守る治山に投資する
- 稼げる経済林に投資する
北海道には緩傾斜林地がたくさんあります。
戦略次第で木材輸出がわずかずつでも増えていくでしょう。
たぶん、これが日本林業の未来を考える時に良い選択です。
生産性が悪い山林はどうしたら…?
カーボンニュートラルの時代に林業が必要です。
森林は防災や環境を守る大事な役割があります。
素材丸太販売で生産成績が悪い山林は、経済効率を考えると放置になります。
しかし、災害防止や国土の安全を守るために山林を活かさなければなりません。
急傾斜地の山林は見てるととても美しいです。
すばらしい日本の林地を観光資源として活かせないでしょうか?
手を加えるのは最低限で、天然林が持つ防災力を最大限に引き出したいものです。
そして、トレッキングや山村生活を体験できる「林業観光」を考えてみてはどうでしょうか?
これからの日本の林業の姿かもしれません。